スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】
ドアを開けたのは、それはそれは不機嫌な顔をした、東海林先輩だった。
「なんだ、千紗じゃん。邪魔しないでよ。良いとこだったのに」
千紗 と桜庭くんが東海林先輩を呼んだのを聴いて、チクリと胸の奥が痛む。やっぱり、桜庭くんとこの人は名前で呼び合うような間柄なんだ。
「千紗だね? とわに変な事言ったの」
低く、桜庭くんが私に問う。私は何も答えなかったけれど、桜庭くんはそれを肯定と取ったようだった。
「あのさ、とわに変なこと吹き込こまないでくれる? 迷惑してんだけど?」
桜庭くんは入り口の東海林先輩に凄味すら感じる程の冷笑を向ける。
「こんな所で何してるの? 湊」
「とわを迎えに来た。それだけ」
書道室に入ってきた東海林先輩から私を庇うように桜庭くんは私と東海林先輩の間に立つ。
「一昨日の約束はどうなったのかしら?」
私に向けられたであろう冷たい問いかけに、桜庭くんが冷たい声音で言い返す。
「無効でしょ。俺の知らないとこで とわに勝手な事言って」
「どこが勝手だって言うのよ。湊、どういうつもり? こんなのに構ってる暇があるなら……」
「こんなのじゃない。俺の大事なとわの事、“こんなの”呼ばわりするな。おいで、帰るよ」
東海林先輩の言葉に言葉を重ねて言い放った桜庭くんは、私の手を掴むと、定位置の机の横にあった私の鞄も掴む。
「待ちなさい、湊」
「うるさいな。自分の事棚に上げて人のことに口出しするなよ」