スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】
道具を棚に戻しながら視線をグラウンドに向ける。 運動部はまだ練習を続けていた。

 私が教室に戻ると、すぐに若菜も戻ってきた。

「とわ、お待たせ。で、これは今日焼いたの」

 どうぞ、と若菜が差し出したのは、白と茶色の市松模様のアイスボックスクッキーだ。

「やった。おなか空いてた」

 若菜は、よく部活で焼いた菓子をお土産に持ってきてくれる。

 クッキーを食べてから教室を出て、グラウンドの前を通り掛かると、練習を切り上げている部もチラホラ見受けられる中、サッカー部は未だに練習中だった。私はその中から、顔ははっきり見えないけれど、武田の姿を見つけ出していた。

「ねぇ、とわ。好きな人、出来た?」

「え?」

 心の中を見抜かれたような気がして、思わず声が上ずっていた。

 私の好きな人。それを若菜に言う訳には行かない。

 何故なら……若菜も武田が好きだから。

 こういうのは、先に言ったもん勝ちなんだと、若菜に「武田くんが好きかも」と言われて初めて気づいた。

 せめて、言われたときに即座に言えばよかったのに……。若菜に言われて半年近くも経った今言うのは憚られる。

< 6 / 206 >

この作品をシェア

pagetop