スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】

 いつもの桜庭くんなら、こんなこと言わない。休み時間に、私のノートを勝手に持って行っちゃうのが桜庭くんなのに。会いたいなんて言わないで、時間と場所を勝手に指定してきそうなのに。

『明日ならいいよ』

 そう返したら、即電話がかかってきたけれど、その声もやっぱりトーンが低くて、少し元気がなかった。色々疲れただけだと言っていたし、電話を切る時にはいつもの調子で、「とわの声聞けたから大丈夫」と言っていたけれど。

 窓の外に照りつける日差しを見ると、ほんとに大丈夫かなぁ? と心配になっていた。

『終わったよ。今どこにいるの?』

 桜庭くんからのメッセージが届いたのは、夕方近く。日が少し傾き始めた頃。市立図書館に居た事と、駅で待ってると伝えて、私は図書館を出た。

『市立図書館って、駅 遠くない?』

 確かに図書館は駅から遠かった。3年くらい前までは。今は、駅の近くの建物の中に移転して、ほぼ駅の隣。

 桜庭くんが図書館にいるイメージが湧かなくて、ふふっと笑みが零れた。

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