スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】

「……怒られるの? 茅ヶ崎さんに?」

 1度もクラスは一緒になったことは無いし、話した事もないけれど、同じ学年のサッカー部マネージャーの茅ヶ崎さんの名前と顔は知っていた。でも、クールビューティーという言葉がよく似合う茅ヶ崎さんが怒るイメージがあまりなくて、聞き返してしまった。

「怒られるよ。めっちゃ怖ぇの。鬼ヶ崎って呼んでる」

 喉を鳴らして笑った桜庭くんは、私の方に視線を向ける。その眼差しはやっぱり優しくて、私の心臓を逸らせる。

「とわ」

 桜庭くんの手が伸びて来て、私の髪を一房掬う。

「髪、おろしてると大人っぽくなるね」

 まっすぐに私を見てくる桜庭くんの視線に耐えられなくて私は顔を逸らした。

 今日の桜庭くんは……先週の月曜日の桜庭くんと一緒だ。優しくてやたらと甘い。思い出したら、先週背中に感じた温もりも思い出してしまって、余計に頬が火照る。

 耳まで赤くなった私をクスクス笑ってみていた桜庭くんは、「なんかすげー鳴ってる」とポケットからスマホを取り出した。

 画面を確認した桜庭くんは、スマホをテーブルに置いて、床に置いていたスポーツバッグに手を伸ばす。

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