クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
はぁはぁと息を切らし、クスの木の下へ行くとぽつんと佇む人影が見えた。

「ジーク様、お待たせしてしまって申し訳ありません」

腰をかがめ、両膝に手をついて乱れた呼吸を整える。

「お勤めご苦労だったな。別にたいして待ってない」
端整な顔立ちが月の光に照らされ、昼間とはまた違った雰囲気にアンナは再び彼を目の前にして緊張した。

「ほら」

「わっ!」

ジークは小脇に抱えた数冊の本を差し出し、いきなりアンナに手渡した。ずしりと重みがかかり、崩しかけたバランスを保つとアンナは一番上に置かれたその表紙に目を落とす。

「薬膳植物学……?」

本を開くとかなり年季もののようで、所々にシミや焼けがある。内容に目を通してみると難しい専門用語が並んでいて頭が痛くなってきた。

「まぁ、座れ」

呆然とするアンナにそう促すと昼間と同じ場所に腰を下ろした。木の下でも陰りはなく、月の光がふたりを照らした。
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