クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
渡された本は分厚く、全部で三冊。また次があるかないかはアンナにかかっていた。本の内容に目を通してみる。

(薬効と化学……化学って、どういうことかしら?)

「あの、さっそくなんですけど……」

アンナはそして早々に疑問に思ったことをジークに尋ねると「見せてみろ」と肩を寄せた。密着する腕にジークの熱を感じて無意識に鼓動が乱れる。本を覗き込むジークからほんのり大人の色香を思わせる香の香りが鼻腔をくすぐった。耳に心地よく、落ち着いたその声でジークが説明を始める。文章を指さす手が左だと気付くと、アンナは無意識に中指を見た。

(あ、指輪……)

そこには確かに金の指輪がはめられていて、印台にはゴブレットの脚に花をつけた蔓が巻きついている紋章が……。

「おい、ちゃんと話を聞いていたか?」

「え、あ、はい!」

つい指輪に気を取られてしまった。鋭いジークの視線に覗き込まれるとアンナはハッとなる。
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