クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
だからこのことは知られたくなかった。とジークの目はそう語りかけていた。それを受けて、アンナは「絶対に誰にも言いません」とコクンと力強く頷いた。しかし、不安の色が浮かんでいたのか、そんなアンナをジークが包み込むように抱き寄せた。

「案ずるな。何があっても私がお前を守る。お前だけは……」

ふわりと香の芳香が鼻を掠めると、ドキリと胸が鳴る。鼓動が激しく乱れ、風邪を引いたわけでもないのに身体に熱を持つ。近距離でその蒼眼に見つめられ、親指の腹で何度も頬を撫でられる。

(私、ジーク様のことを考えるとドキドキして……どうしてなの)

高鳴るような色気を感じてアンナは無意識に恍惚となり、そして吸い込まれそうなその瞳にうっとりとして、潤んだ目でジークを見上げた。
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