クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
(はぁ、私としたことが……ベアトリクス様の機嫌を損ねてしまったわ)

鬱々とした気持ちでソフィアは城の石階段をあがり地上へ出る。すると、中庭でひとりレオンが剣を振るって稽古をしている姿が見えた。

「ああ、ソフィアか」

気配に勘づいたレオンが振り向くと、額の汗がパッと散った。

「あなたの母上様のところへ行っていたわ」

歩み寄りながら言うと、爽やかな笑顔だったレオンの顔に影が差した。

「すまないな、面倒をかけて」

レオンは自分の母親が罪人であることに引け目を感じていた。重罪を犯した息子でありながらまだ王位継承権を剥奪されずに王族でいられるのは、ジークの恩情によるものだった。生意気な態度を取ることもあるが、実際のところレオンはジークに頭があがらない。

「ベアトリクス様のことなんだけど……」
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