クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
――誰かがあの娘の情報をベアトリクス様に流している。

ソフィアはそう言いかけてやめた。

(もし、レオンに疑われたら……)

昔からの馴染みだし、レオンは自分を信じている。しかし、そんな彼から疑念を抱かれてしまうのが怖かった。ここは余計なことを言わずに黙っておこう。と、ソフィアは別の話へ切り替えた。

「最近のベアトリクス様、精神的に不安定だわ。時間があるときにでも顔を見せてあげて、あなたのことを気にかけていたわよ」

ソフィアがそう言っても、レオンは顔を曇らせて口を閉ざした。

レオンは母であるベアトリクスに近づくことを避けていた。ベアトリクスは謀反を起こし、第一王妃とジークに手をかけた。ようやくその事実を受け入れ、母と別離する覚悟をしたというのに、レオンの中ではいまさらもう親子の絆などないのだ。

「僕はまだ、母上のことを許したわけじゃないよ。母に会うことは……少し考えさせて欲しい」
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