クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
まとめ上げた長い黒髪がまるで馬の尾のように揺れ、凛とした姿に見惚れていると視線が合った。

「こんばんは」

アンナはなぜだかソフィアから得体の知れない気迫を感じてならなかった。女性でありながら軍に従事している凛々しさがひしひしと伝わってくる。

「あなたは、アンナ・ローランドね? 話は聞いているわ」

ソフィアは目を細め柔らかく笑った。初めて会ったとき、確かに向けられたあの視線には敵意が滲んでいたように思えたが、気のせいだったのかとアンナは軽く会釈した。

「お仕事は終わり?」

「いえ、その……仕事中に火傷をしてしまって、軟膏をジーク様のところへもらいに行く途中なんですけれど、部屋がわからなくて」

「火傷? 見せて」

彼女も医師だ。火傷の程度がどのくらいのものか興味があったのだろう。アンナはおずおずと火傷を負った手をソフィアの前に出して見せる。
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