クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「これ、すぐに手当てしないとひどい水膨れになるわよ。軟膏なら私が今持っているから、それを使えばいいわ」

「え、でも……」

アンナが戸惑っていると、ソフィアは腰に下げた腰から下げた革製の小物入れから軟膏が入った容器を取り出してアンナに手渡した。

「私もよく怪我をするの、塗り薬くらいなら常備しているわ。だからジークのところへ行く必要なんかないでしょ、彼は今夜も忙しいから」

それを聞いて、アンナはジークのところへ行かせないために自分の軟膏を渡されたのだ。となんとなく勘ぐってしまった。

(考えすぎよ……)

けれど、自分を見つめるソフィアの視線は冷たい。嫌な予感がする。

「あの、やっぱりこれは使えません。ソフィア様だって必要なものですし……今夜も忙しいっていうのは、公務かなにかですか?」

手渡された軟膏を返そうとすると、唇をへの字に曲げ、ソフィアはあからさまにムッとした顔になった。
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