クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「憎しみを持つ者は同調するもの。あなたの言葉から彼女に対する憎しみが伝わってくるわ、だからわかるのよ。ああ、こんなにもジークを慕っているのに、なぜあの子を見るの? って」

「お、おやめください。決してそのようなことは……」

蛇のようにまとわりつく視線から、ソフィアは反射的に目を反らす。

「ジークの命を救ったバンクラール卿の娘ですもの、彼があの娘を目に掛けるのは必然よね?」

すべて見透かされいるようで恐ろしかった。鼓動の乱れも悟られているのではないかとソフィアは口を噤んだ。

「可哀そうなソフィア。ねぇ、もっと近くに来て頂戴」

言われたとおりに少し身を寄せるが、彼女の目を見てはいけない。わざと動揺するようなことを言って楽しんでいるのだ。

ベアトリクスのまるで惑わすような視線は、心身ともに鍛えたソフィアでさえも揺るがすものだった。毅然とした態度を貫きつつも、ベアトリクスの言うようにジークの周りにまとわりついているアンナの存在は疎ましかった。

自身にも嘘をつくことのできないソフィアは、ベアトリクスの視線をまともに見ることができなかった。
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