クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「アンナ、といったわね? 私もバンクラールの者はすべてが憎いわ。コンラッドがジークを救わなければこんな所に閉じ込められずに済んだものを……だから、少しだけどんな娘なのか興味があったのよ、栗色の髪に濃茶の目……」

アンナの特徴を何度もぶつぶつと繰り返し、一点を見つめながら時折クスクスと笑っている。

「ソフィア。私、あなたに協力してあげてもいいわよ。時間はかかるかもしれないけれど……可愛いソフィアのためだもの、楽しみにしててね」

「え……?」

ベアトリクスはふわっとあくびをする口元に手をあてがう。そして、ソフィアの返事を待つことなく奥のベッドへそろそろと歩いて行くと「もう眠いわ」と言って、ごろんと寝そべり目を閉じた。

「お休みなさいませ。失礼します」

(協力? いったいなんのこと?)

ずいぶんと話しこんでしまった。今夜のベアトリクスはなぜか上機嫌で、気性を乱すことはなかった。ソフィアはそのことにホッとして“協力”の意味を尋ねることなく頭を垂れるとその場を後にした。
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