クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
馬車で送りたいのは山々だったが、ボブロは夕方の営業のための仕込みを午後イチでしなければならならず、送るために今夜は店を閉めるとまで言い出したせいでミネアと喧嘩が勃発し昨夜はひと悶着あったのだ。

「アンナ、こんな物しか作れなかったけど、途中で食べなさい。多分、歩きだと王都に着くのは昼頃だから、お腹が空くでしょう」

薄布に包まれていたのはアンナの好きなグリルチキンのサンドイッチだった。

「ありがとう、城の生活が落ち着いたら手紙を書くわ」

「元気で頑張るんだよ」

ぎゅっと握られた手からミネアの温かな手が離れる。熱が冷めていくと名残惜しさが抑えきれなくなると、アンナは手を振って踵を返した。今まで一度たりともローランド夫妻から離れたことのなかったアンナは背を向けた途端、くしゃりと顔を歪めた。

(泣いちゃだめ、泣いちゃだめ!)

アンナは振り返ることなく、王都までの道のりを歩きだしたのだった――。
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