クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
出会った当初、その客はもっと華奢な体つきだったが、今では一八〇は超え、体つきもしっかりしている。唯一、勘定の際に垣間見える手はまだハリがあって、きっと若い男性だろうと憶測していた。ふらっと現れ、いつの間にか店からいなくなってしまうため、アンナは勝手に“風来の貴公子”と名付けて彼が来店するのを心待ちにしていたが、話しかけても首を振ったり頷いたりするだけで八年もの間、今までで一度たりとも会話をしたことも声を聞いたこともないのだった。
世の中にはいろんな人がいる。
アンナはきっと失語症の類であるのだろうと特に気にかけていなかった。人懐こいアンナはそんな彼を不審がることもせず、他の客と同じようにいつも明るく元気に接していた。そんな彼だが、ふとした拍子に笑んだ口元が見え隠れすることがある。
それが見たくてアンナはついお喋りに投じてしまい「アンナ! いつまでお喋りしてるんだい、早くこっち手伝っておくれ」とミネアにしばしば注意されてしまうのだった。
今夜の料理であるシチューも残り少なくなってきた頃。
世の中にはいろんな人がいる。
アンナはきっと失語症の類であるのだろうと特に気にかけていなかった。人懐こいアンナはそんな彼を不審がることもせず、他の客と同じようにいつも明るく元気に接していた。そんな彼だが、ふとした拍子に笑んだ口元が見え隠れすることがある。
それが見たくてアンナはついお喋りに投じてしまい「アンナ! いつまでお喋りしてるんだい、早くこっち手伝っておくれ」とミネアにしばしば注意されてしまうのだった。
今夜の料理であるシチューも残り少なくなってきた頃。