桜つづり
『由奈!!』
今でも頭の中でこだまする
あのときの壱路の声。
私がまだ小学2年生のころ。
壱路と、凛と、翔と、来た夏祭りで
私はみんなとはぐれて迷子になった。
人ごみからはずれ、
薄暗い茂みに迷い込んでしまった私を
見つけてくれたあのときの
壱路の声。
まだ覚えてるよ。
だって、嬉しかったから。
「いちっ…!
…壱路ぉおおーっ。」
「見つけた…っ!」
小さく茂みにうずまってしまっていた私を
汗をかきながら見つけてくれた、
泣きじゃくっていた私を
優しく抱きしめてくれた、
それまではただの幼馴染だった壱路に
私は一瞬で恋に落ちた。
「もう大丈夫だから、泣いちゃ駄目だよ。」
壱路…。
「怖かったよね。ごめんね。」
ううん、壱路に見つけてもらって怖さなんて
どこかへふっとんだよ。
「もう一人ぼっちになんてしないから。
由奈は僕が守るから。
ずっと一緒に居てあげるからね。」
うん、うん、
ずっと一緒にいようね。
壱路…。
――――…。
これが私の初恋。
"ずっと一緒にいようね"
そう約束を交わした瞬間から
私は壱路に恋をした。
そして今でも、まだ…。