残念な堀井さん。
「嫌です。私、堀井さんのプライベート空間に入らないって決めてるんで」

タイミング良く運ばれてきた、鯵の塩焼き定食を「いただきます」と食べ始める。

が、視界の端に映る堀井さんはまだ手をつけていない。

「そんなに時間がないですよ。食べて下さい」

私が声をかけても、食事に手を付けずじっとしている。
嫌な予感しかしないけど、チラッと堀井さんを見ると…

「な、泣かないでよ!」

30を超えた大の男が、何と溢れる寸前の涙を目に溜めていた。

私の声に振り返った、周りの人達が「別れ話か?」「痴話喧嘩か?」とざわつく声が耳に痛い。
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