短編集
「目を、閉じてください」
「え?」
「さあ、」
続いた沈黙を破る彼の突然の台詞に戸惑いながらも、言われるがままに目を閉じる。
すると、ふわり。
私の瞼の上に冷たい感触がのる。
「何も考えないで。すぐに眠りにつけますよ」
彼の手は想像以上に大きかった。その大きな手はひんやりと冷たいのに、どこか温かく感じるのは何故なのだろう。
「おやすみなさい、お嬢様。」
耳元で囁く様に言う彼の声はとても落ち着いていて、降り続ける雨の音を聞きながら、私はそのまま眠りについたのだった――。
**廻る起点と終点の記録にて
しと しと 、
しと しと 。
「……愛して、います」
それは夢か幻か。
あの声が、私のすぐ傍で聴こえた気がした。
――嗚呼、今宵も雨が降る。
お題提供thanx!
空想アリア
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