短編集
と、いうワケでそんな彼女のお昼は今日予約済みらしい。
その方程式から必然的に導き出される答えは、私のぼっち警報だ。今日のお昼は社員食堂で食べてはいけない、かわいそうな女になる。
「(……どっか、探して食べてくか)」
視線を上げた先に映る沢山の高層ビル。普段はあの中のいちオフィスでPCに向かっているなんて、自分のことなのに現実味がまるで無い。
思わず吐き出した溜め息は無意識の内のものだった。
乾いた中に冷たさを孕む風に背を向けるようにパンプスの爪先を方向転換させる。取り敢えず、何か温まるものが食べたい。
―――――と、
「……………」
再度、流れるような人波に滑り込もうと思った刹那。
場所は道端の宝くじ売り場。左側には楕円式の緩やかな段差、右側には尚も流動する人波。そして真ん前にある、例の宝くじ売り場。
『あなたも私も3億円のチャンス!』なんてデカデカと表示された広告の文字に顔を顰めた。いやちょっと待って、ごめんその文字に対してじゃなくて。
「…………」
「…………」
絡んでしまった視線をほどく方法が分からず、私はその場に立ちすくむ。