短編集
宝くじ売り場の前で、その場にそぐわない高級そうなスーツに身を包む男。
その表情は私のそれと大して変わらない。それはきっと、相違ない。
「…………」
喉の奥にベッタリと貼り付いてしまったように、声が全然出てくれない。
だって、似過ぎてる。
驚いたときに見せる表情も、
すらりとした立ち姿も、
顔のパーツとかも、
全部、全部全部全部――――……
「――――……ッ、」
か細く、死んでしまうような声で呟いた。
「………、さん」