短編集
―――黒髪ロングのストレートヘアに、バサバサと存在を主張する睫毛。
「……まだ?」
「はいはい、もうちょっとで終わるから我慢してねー」
―――やや上気したかのように薄く色付いた頬桁と、瞼の上で煌めく何やらラメのような化粧品の数々。
正座している所為で広がる制服のプリーツから覗くのは、さすがに生足では無く学校指定のジャージで。
「んー……、こんなもんかな」
「おお……!!」
目を瞠(みは)り、徐に立ち上がってみる。
そして背丈程もある鏡の前で一回転してみると、長い髪がふわりと靡き何度も折ったスカートがヒラリと舞った。
「ひなた!!お前天才か!?」
「うははは!もっと褒めるが良い!感謝したまえ陽斗(はると)!」
感激にぴょんぴょん飛び跳ねる俺の眼前。
仁王立ちし手を腰に当てふんぞり返るこの女は、クラスメイトのひなたである。