短編集



傍(はた)から見れば女二人で盛り上がっている様にしか見えないだろう。

特段何かイベントがある訳でも無い、普通の一日。

放課後にひなたの家にお邪魔する運びとなり、剰(あまつさ)え女装する羽目になったのは何故か。

それを説明するには、先週の放課後にまで遡る必要がある―――。





* * *





「失礼しまーす」




昼休み必ず職員室に寄れよ、という担任の指示に従うべくして歩を進めたときに"それ"は起こった。

運命なんて信じてもいなかった。

況してや、自分は女子がきゃあきゃあ言う様な色恋沙汰になんて無縁の側に居る人間だとすら思っていた。




―――ドンッ

「あ、ご、ごめんなさい……」

「、いえ!俺の方こそすみません」




―――職員室に入ってすぐ、一番左側の通路での出来事。



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