短編集



いきなり耳元で大声を出された所為で、ガンガンと脳が痛みを訴えてくる。

それまで囲った腕の中に顔を埋め、眠りに就いていたのだから尚のことだ。




「ちょっと見てコレ、今度のライブの日程出てさ~」




ひなたは音楽の趣味が合う友達で。

良く待ち合わせて二人で出掛けたりもする、俺の中じゃ数少ない女友達の一人だ。

ひなたが自らのスマホを取り出してロックを解除する。

その際に目に入った人物に目を見開いた俺は、勢いもそのままに思わずひなたの腕を掴み画面を凝視した。





「ちょ、何!?びっくりしたぁ!」

「ひなた」

「そんなに真面目な顔してどうしたの?」



眸を瞬かせて首を傾げるひなた。

その間にも俺は彼女のスマホ画面から目を離すことが出来ない。




「この女の人、ひなたの知り合いなのか…?」





―――そう、そこには。

ひなたと満面の笑みで写り込んでいる、職員室で出逢った"彼女"の姿が在ったのだ。


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