短編集
「協力はするよ?するんだけど、姉ちゃん落とすのは難しいかも」
「か、彼氏がいるとか……!」
想像するだけで項垂れる。あんなに素敵な人だ、むしろ周りが放っておかないだろう。
勝手に推理して一人落ち込む俺の頭を、丸めたプリント用紙でスパコーン!―――叩いたひなたは「違うわボケ!」と華麗なツッコミを披露した。
「ちがくて、姉ちゃんはさぁ…」
「おう」
小さく手招きされて丸めたプリントの先に耳朶をくっ付ける。
筒の反対側で口をすっぽりと覆ったひなたは、予想だにし得なかった一言を口にしたのだ。
「男の人が苦手なんだって。喋るのも、触られるのも嫌みたい。……だから、大学も女子大にするって言ってたよ」
―――ガツーン!と、まるで天井から盥(たらい)でも降ってきたかの様な衝撃が俺を襲う。
所謂"男嫌い"という類のものなのだろうか。
だとしたら、どの様に接していくのが正解なのだろうか……目の前に暗雲が立ち込め始めた、その時だった。