短編集




それにしても女子って話好きだよな。

来るたびに「もう会話ねぇよ~」と明日の話題作りに頭を悩ませる俺のことなんて露知らず、次から次へとポンポン話のネタが飛び出してくるものだから敵わない。



ケタケタと腹を抱えて笑うひなたのスマホが、音を立てて主を呼ぶ。

ついに来た!―――そんな俺の予想を裏付けるように、ひなたは急に焦った口調を装ってこんな事を口にした。






「ごめん!お姉ちゃん、ハルコちゃん。今日デートなのすっかり忘れてて、彼もう家の前まで来てるって…」

「あら!ひなたってば~」

「本当ゴメン!なんだけど、ハルコちゃん方向音痴だし、お姉ちゃん駅まで送ってあげてくれない…?ダメかな?」





合わせた両手の中でチラリ、様子を窺うように瞳だけ覗かせるひなた。

演技上手いなコイツ…なんて思いながらも、さくらさんの反応が気になった俺は彼女の方を見遣る。





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