短編集
子どもはここで待機して、って、大人のお姉さんに言われていたのに。
トイレは仕方ないかもしれないけど、私に言われてもどうして良いかわからないのに。
走り去る背中も見えなくなってしまって、一層焦りを募らせた私は、先ほど説明してくれたお姉さんを探し始めた。
幾重にもかさなる子どもたちの集団。その塊から飛び出すと、少し離れた場所に停められたトラックのところで飲み物を片手に談笑するお姉さんたちを見付けた。
早鐘を打つ心臓を諌めながら、一度大きく深呼吸して足早に向かう。
説明をしてくれた、お姉さんを目指して。
初めて見る景色ばかりで、ただでさえパンクしそうだったのに。
こういう機会でもなければ話すことさえ無かっただろう派手な身形のお姉さんに向かって、震える声を絞り出す。
「……あの!」