短編集
「ん?なーに、どうしたの?」
屈んで目線を合わせてくれるお姉さんを見て、少しだけ安心する。
思ったよりも、恐い人じゃないのかもしれない。
「エミちゃんと、エミちゃんの友だちがトイレに行っちゃって…」
「え!?トイレ休憩はさっき、全員済ませてって言ったはずだよね?」
ぎゅっと寄せた眉間で詰め寄られ、整えられた柳眉が不機嫌を顕わにする。
その形相に竦んでしまった私は、咄嗟に震える声で「ごめんなさい…」と呟くがお姉さんの視線はすでに他の女の人に向けられていて。
「あと何分かわかる?」
「え?間もなくじゃない?あ、ほら、アナウンス」
「あーもう!ほんと困る!ちょっとタツキ、この子と一緒にエミって子探してきてくれない?あたしもう準備しなきゃ間に合わないし!」
「はぁ?なんだよ急に…」
「いいから!お願い!」