短編集
背中をぐいぐい押されて辿り着いた先は、『危ないから近付かないように』と代表のおじさんに言われていた集団の真ん中だった。
たくさんの男の人たちが、汗を流しながら大きな竹を抱えて歩いている。
遠くから見ているならまだしも、こんなに近くに、しかも自分が渦中に飛び込んでしまうなんて信じられなかった。
だから、お姉さんの手が離れて、居なくなってしまってから気付く。
取り残された私の両目から、パニックにも似た感情のせいで涙が溢れてしまっていたことに。
「え!?ど、どうした!?」
いきなり泣きだす小学生を前に、困惑を隠せない大人のお兄さん。
──まさかタツ兄さんが覚えているとは思わなかったけれど、これが私たちの出会いだった。