短編集




まだ誇れるような何かを見付けられたわけじゃない。

自分自身の魅力がわからないのに、女の人に不自由しなさそうなタツ兄さんに告白されている現状に頭が追い付かないというのが、正直な気持ちだった。





「……タツ兄さん、私」





だからありのままを口にした。
タツ兄さんの魅力ならわかる。けれど、私の何がいいのかが解らない。


ただ静かに耳を傾けてくれていたタツ兄さんは、暫くしてからこんな言葉で返してくれた。





「そんなこと言ったら、俺なんかお前よりずっと年くってるし。オッサンにしか見えないんじゃないかと思って、ずっと恐かったんだよ」





タツ兄さんの吸いかけの煙草の残りが、灰皿の中で紫煙を立ち上らせていく。




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