拝啓、未来へ
「きょお、ちゃん」
「………。」
「……痛い、」
「………。」
それでも歩き続ける恭ちゃん。
掴むその大きな手には、先程までと変わらない強さがある。
「痛いよ……っ」
そんな強い力に負けない、叫ぶような声で痛みを訴える。
するとようやく恭ちゃんは立ち止まり、急いで振り返ってわたしの姿を捉える。
泣いているわたしをその瞳に映すと、ハッとした表情を見せて「すまん」と小さく呟いた。
掴んでいた二の腕をそっと離す。
そしてわたしの視線に合わせ屈み、溢れる涙を親指で拭った。
恭ちゃんの温かくて大きな手が、輪郭をなぞるようにわたしの両頬を包み込む。
こんな時でさえ、わたしの心拍数を簡単に上げる彼は本当にずるい。
まだ滲む視線の先では、恭ちゃんの苦虫を噛み潰したような顔がぼんやりと伺えた。