拝啓、未来へ
4枚目
昨日は深夜まで残業だった。
今日も残業をしなければ確実に納期に間に合わないだろうし、きっと明日も――…。
「(なんで仕事してんねやろ)」
溜息混じりにそんなことを考える。
淹れてもらったコーヒーも、今はもう冷たくなってしまった。
キーボードを叩く手を止め、冷たいマグカップを持ち上げて冷たい液体をぐいっと飲み干す。
美味しくないそれに顔を顰めた。
男だから。
仕事だから。
生活のためだから。
そうやって毎日、膨大な資料をひたすら片付けてゆく。
頑張るしかない。わかってはいるけれど。
「楢原さん」
呼ばれた自分の苗字に反射的に振り向く。
背後にはニコニコと笑顔の絶えない派遣の子がいた。
それに、抑揚のない少し低い声で応える。
「何ですか」
「コーヒー淹れましょうか?」
デコレーションされた爪先で俺のマグカップを差す派遣の子に、バレないようこっそりと息を吐く。