拝啓、未来へ



《多分寝室のテーブル。茶封筒のやつない?》


寝室?そこは見てないなー。
恭ちゃんと会話をしているかのように呟きながら、寝室へ探しに行く。



「……あ、」



恭ちゃんが忘れたという大事な書類はテーブルではなく、寝室に入ってすぐの床にぽとりと落ちていた。
それを見ていると、しっかり者の恭ちゃんとぼけっとしているわたしがまるで逆転したかのようで笑えた。



「大事な書類って言ってたのに」



きっと急いでたんだろうな。
落としたことに気づかないなんて。

バカ、だなあ。
でもそういうところも、すきだよ。



それから《今から持っていくね》と返事をして外に出る準備を始めた。

そこでふと気付く。

わたし、恭ちゃんの会社に行くんだ。
ということは恭ちゃんの会社の人たちに会うかもしれない。

そう思うと少しでも恭ちゃんに釣り合う女に見られたくて、準備にいつも以上に気合を入れた。


玄関で靴を履いているとき、恭ちゃんからメールが来た。

《近くなったら連絡して。》――それだけなのに、恭ちゃんの優しさが全部詰まっているような気がした。


< 46 / 78 >

この作品をシェア

pagetop