拝啓、未来へ



歩くわたしの横を、ゆるやかな風が通り過ぎる。
揺れるワンピースと少し高めのヒールの音が、わたしの気持ちを表しているかのように思えた。



「ふふふ」



ドキドキ、わくわく、ウキウキ。
胸の高鳴り、高揚感、弾む心。


どんな風に渡そうかな。
どうやって怒ってあげようかな。


そんなことを考えると、自然と笑みが零れた。
ああ、恭ちゃんの働く姿が見れるなんて、楽しみで仕方がない。




――恭ちゃんの会社は何度か前を通り過ぎたことがある。
デートで通る道に建つその会社は結構大きな企業で、「ここが俺の働いとる会社やで」と自慢気に話すのも納得できた。

自慢がまったく嫌味にならないのは彼の人柄だと思う。
むしろ自慢気に話すときの恭ちゃんは、無邪気な子どもみたいでなんだか可愛い。

本人には言えないけれど。


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