拝啓、未来へ



なんで外にいるのかと問いかけたところ、「んー?」と間延びした声で恭ちゃんは言う。



「はる遅いなあと思って、先にご飯買いに行っとった」

「え、」

「ほら」



そうやってコンビニのビニール袋を目の前でぶらぶらとさせる。

あー、残念。
会社から出てくるところ、見たかったな。



「なにガッカリしてんねん」

「……してないもん」

「じゃあ拗ねなさんな」



袋を持っていない方の手でコツンとわたしの頭を小突くから、つい顔を上げてしまった。

上げた先で、柔らかい笑みを浮かべている恭ちゃんと目が合う。



「………。」

「ん?なに?」



不思議そうな顔をした恭ちゃんのスーツ姿を、今度はじっくりと見つめる。

家で見るスーツ姿の恭ちゃんとは何かが違う。
社会に出た恭ちゃんは大人で格好良くて、少し遠い世界の人みたいだった。



恭ちゃん。
ねぇ、恭ちゃん。

わたし、何故かわからないけど、今すごく寂しいよ。


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