拝啓、未来へ



「じゃあ、帰るね」

「あ、はる。ご飯食べた?」

「ううん。まだ」

「じゃあ一緒に食べる?」



帰ろうとするわたしに、恭ちゃんはランチのお誘いをしてくれる。

正直、一緒に食べたかったけど。
すごーく食べたかったけど。



「大丈夫。忙しいんでしょ?」



最近の恭ちゃんは土曜日だけでなく日曜日だって時々会社に行くし、かなり忙しいんだろうなって思うから。



「早く仕事終わらせて早く、…帰ってきてね。」



子どものわたしは気の利いた言葉も知らない。
だから今は、わがままを言うので精一杯。



「……はる。(なにこの子。むっちゃ可愛いんですけど)」

「帰ってくるの待ってるね」

「……わかった。(仕事なんぞそっこー終わらしたる!)」



名残惜しさに髪を引かれる思いだったけれど、今度こそ帰ろうと踵を返す。

そんなわたしの背中に恭ちゃんは「はる」と呼び掛ける。振り向くと、大好きな笑顔がいっぱいに広がった。



「気をつけて!帰ったらメールな!」



優しく心配してくれるから、わたしも心から笑顔になれる。
バイバイ、と手を振るとちゃんと振り返してくれる。


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