拝啓、未来へ
「……お客さん、多いなあ」
ぽつりと零した声も、お客さんの笑い声や雑談音に紛れて消えてゆく。
もしかして、一番忙しい時に来ちゃったかも。
いや、もしかしてなんかじゃなく絶対にそうだろうと、注文を取り終えて戻ってきたマスターに声をかける。
「あの、手伝います」
「え?ほんと?バイトじゃないのにごめんね、助かる」
「いえ」
マスターの早口に、猫の手も借りたいくらいだったのかもなんて思った。
それからすぐに裏に回って自身のロッカーを開ける。
中に入っているエプロンを急いで着て、名札も忘れずにカウンターに立った。
「すみません」
「はい」
きっと忙しさで鬱々とした気持ちも晴れるだろう。
夕飯の材料を買うのは遅くなるかもしれない。
仕込みもできないかもしれない、けど。