拝啓、未来へ
「はるちゃん早くー」
「ま、待って……いや待たなくていいよ!」
男の子だけあって準備が早い新田くんは、ドアの向こうでわたしのことを待っているようだ。
っていうか待たなくてもいいのに!
今日は反省することもないと、思う、し……。多分。
「忘れ物ないー?」
「た、多分ない」
「また財布忘れないようにねー」
「う、……大丈夫だもん!」
子どもみたいな扱いに新田くんをきっと睨む。
だけど新田くんはゆるりと笑うばかりで、同じ年なのになんだか悔しい。
「智樹。」
結局わたしを待っていた新田くんと一緒に帰ることになり、バイト先から少し進んだ時。
前方から掛けられた声に驚いて、無意識に隣の新田くんを見る。
智樹、って新田くんの名前だよね?
その声に足を止めた新田くんは、前方に見える陰をじっと見据えた。
「智樹。」
再び掛けられた凛とした声に、新田くんはしぶしぶと言った感じで声を漏らす。