拝啓、未来へ
――新田くんの好きな人が、わたし?
意味は理解できるのに、深く考えてしまうのを諦めたようにわたしの頭でくるくる回る。
「奈々、お前、浮気してるだろ?」
断言する口調に意識を現実へ引き戻す。
言葉を発した新田くんは、それに伴って強い瞳をしていた。
奈々さんも目を見開いて、わたしと同様に新田くんを見つめていた。
「………え、智樹…?」
「知ってるんだ」
「ちょ、ちょっと待って、」
「ここ1年くらい、ずっとおかしいなって思ってた。」
困惑したように視線を泳がす奈々さんに、それでも表情を変えず淡々と喋り続ける新田くん。
その横で何もできないわたし。
「智樹……?」
「首の後ろにあったキスマーク。」
「っ、」
「一番最初に気付いたのはそれだ」
口を挟むことが許されない傍観者へと成り果てたわたしは、静かに身を潜める。
ここが暗い夜道でよかったと思った。
わたしという存在を隠してくれるから。