拝啓、未来へ
季節が春から夏に変わろうとしているこの時期の風は生温くて、肌に当たるその感触に顔を顰める。
――言うつもりもなかったし、困らせるつもりもなかった。
新田くんとこの道で別れてから、きっともう数分経った。
いや、数十分かもしれないし何時間も経ったかもしれない。
――はるちゃんに彼氏がいることわかってるし、
だけどわたしはまだ、動けないでいる。
わからない。
時間の感覚がない。
――気にしないで……ってそんなの無理だよな。
どうしたらいいのだろう。
わからない。
先程からこれでもかってくらい頭の中で繰り返している。
――……ごめん。
新田くんの表情を思い出す。
困惑、嘆き、悲痛、失望――震える声を思い出しては、わたしは一人立ち竦む。