拝啓、未来へ



――…ピリリリリリ、

そんなときだった。
暗い闇を切り裂くように、鞄にしまっていた携帯が着信を知らせる。


”着信 楢原恭平”



「っあ、」



取り出して液晶画面を確認すると、そこには恭ちゃんの名前が存在を主張するように光っていた。
早く、と急かさんばかりに鳴り続ける携帯を慌てて耳につける。



「もしも、」

『っあ、はる?お前、今、どこおんの?』



通話ボタンを押すとほぼ同時に、電話越しで声が聞こえた。
いつもと違って少し早口で焦ってる。でも決して責めるような口調じゃない。



『今日早めに帰れたのに、お前、おらんから、』

「きょうちゃ、」

『どうしたん?大丈夫か?なんかあったんか?』



心配している様子が伝わる。
わたしの大好きな、あまいあまい、恭ちゃんの低めの声。



「……恭ちゃん、」

『、どうした?』



恭ちゃんの声はとても安心する。
そして同時に、わたしをひどく脆く弱くする。


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