裏通りランコントル
《裏通り3番地》。
スーツの男性、オリは確かにそう言っていたがわたしには聞き覚えのない土地名だった。
別に、元々どこかに行く予定はなかった。
ただ家に居たくなくて、ふらふらと宛てもなく歩いていただけだった。
考え事をしながら適当に歩いた先でオリに見つけてもらった。
本当に、そう。
迷い込んだみたいに。
そうして誘われ、手をとった。
引かれるがままについていった先は大きな古民家風のお屋敷で、庭もとても広かった。
オリにローズティーとクッキーをもらった。
絶妙な甘さと香り、とても美味しかった。
クッキー……。
そういえば彼の名前はなんだったのだろう。
あの着物を着た彼。
聞き損ねてしまったな。
まあいいか。
もう二度と会うことはないだろう。
ああでも、やっぱり聞いておけばよかったかも。
そこに特に意味はないけれど。