裏通りランコントル
「すみません。お待たせいたしました」
「悪いな」
再びパタパタと音を鳴らしながら、オリは綺麗に畳まれたものを手に持ってきた。
見るからに質の良さそうな白いふわふわなタオル。
差し出された1枚を取った彼は、それを広げてわたしの頭を拭いた。手つきは乱暴のようで、優しい。
一通り拭き終えて満足したのか、使用したタオルをわたしにほれっと手渡す。
きっと後は自分で拭けという意味なんだろう。
そう思い、腕についていた水滴をタオルに吸い込ませた。
ふと、わたしの髪に手櫛が通る。
彼の指がぐしゃぐしゃになった髪を上から下へと動く。まるで感触を確かめているようにゆるやかだった。
その動作を目の端で捉える。
視線を感じてそちらに向くと、彼の切れ長の瞳がわたしを見つめていた。
言葉は無い。
無愛想というわけではなく、どちらかというと真剣な面持ちが少し怖い。
しっかりとわたしを映す薄いブラウン色に、吸い込まれてしまいそうだと息を呑んだ。
こくりと喉を鳴らしたことに気づいた彼は、わたしの髪を一度くしゃりと撫で上げる。
そして新しいタオルで自身の髪をガシガシと雑に拭きあげていた。
彼の瞳は、少し危険。
警報音が脳内で遠く鳴る。