裏通りランコントル
……なぜ笑われるのだろう。
その行動の意味がまったくわからなくて少しムッとすると「あぁ、いやいや違う違う」と、さらにわけのわからないことを言う。
口許に手をやりそれを隠しているようだが、隙間からニヤニヤ顔がのぞいている。
「まさかクリーニングに出すとはな」
余計に意味がわからなかった。
人様にお借りしたものをクリーニングに出して返す。それだけのことにそんなに笑うところがあるだろうか。
このひとの笑うツボは不明だ。
まあツボなんて人それぞれだとは思うけれど。
「それで?」
少し落ち着いたのか、再び着物の袖に手を入れ腕組みをしてみせた彼はそう言った。
それで、とは。
何が言いたいのかがわからず眉をひそめると、切れ長の瞳を驚いたように見開いた。
「これを返しに来ただけなのか?」
なぜそんなに驚く必要があるのか。
他に用事がなければダメだったのか。
わからないけれど、本当にマフラーを返しに来ただけだったから素直に頷いておいた。