裏通りランコントル
以前と同じく通された客間は、相変わらずモデルルームのように綺麗だった。
磨かれたフローリングに、白い革張りのソファも。
ガラステーブルの上に置かれた緑色の観葉植物でさえ変わりはない。
ソファに落ち着いたときにはすでにオリの姿はなかった。
きっとわたしたちのために、また美味しい飲み物を用意してくれているんだろう。
座る位置も以前と同じだった。
わたしから見て斜め左側。上座と言われる場所にある一人用のソファに腰を掛けたのは彼。
肘掛けに手をやり、大げさにふうと息を吐く音が耳に届く。
そうして天井を仰ぎ見るその姿を、わたしは盗み見た。
……もしかして、疲れているのだろうか。
そんなときにお邪魔してしまって申し訳ないな。マフラーを返したかっただけなのだけれど。
なんて考えていたとき。
――バチリ。
彼とわたしの視線が混じり合った。
どきりと一度、心臓が跳ねた気がする。
「――――――……、」
薄い唇が、何かを言いたげに開いた。