裏通りランコントル
「お待たせいたしました」
その声に、お互いピクリとカラダが動く。
オリが戻ってきたのだ。
客間に途端に広がるのは、甘い香り。
振り向いたわたしにオリは一度首をかしげるような仕草をしたが、すぐににこりと笑った。
「ココアをお持ちいたしました」
「緑茶とかじゃないのか」
「緑茶は体を冷やすと言われていますので。それに――」
ココアは血流を良くするとのことです。体温を上げるのにも効果的なようですね。
ポリフェノールが豊富で美肌やダイエットにも効果が高いそうですよ。
そうそう。それに加えて自律神経を整えたりリラックス作用もあるようで――
げぇ、と着物の彼は心底嫌そうにそう呟く。
「うるさい知恵披露が始まってしまった…」
がっくりと項垂れ文字通り頭を抱える彼に、わたしは「これはきっと日常茶飯事なんだな」と思った。