裏通りランコントル



「何かお持ちしましょうか?」



その声にハッと我に返る。
振り返るとそこには優しい顔をしたオリがいた。

わたしの中で渦巻く感情を見透かされた気がして思わず俯く。


今、わたしは、何を思った?
何を感じて、何を考えた?


感じたことのない自分の知らなかった何かが這い上がってくるのを、必死に抑えた。



「ココアもなくなってしまいましたね」



――またあたたかいのを淹れてきましょう。
そんなわたしを尻目に、オリはカチャカチャと、それでいて静かにマグカップを片付けてゆく。


踵(きびす)を返すオリの、高級そうで光沢のある綺麗なスーツの裾を思わず掴んだ。

わたしの行動に目を見開いて振り返るオリ。
だが、次の瞬間には微笑を浮かべ「どうしました?」と優しく問うてくる。


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