裏通りランコントル



ココアのおかわりを、と。
落ち着いたところでオリはトレーを両手で持ち直し、改めて客間を出て行こうとする。

オリの淹れたココアはあまくてとても美味しかったけれど、なにかコツでもあるのだろうか。

去ってゆく背中を見ながらぼやっと考えていたら、オリはわたしの胸中を察したかのようにくるりと振り返った。



「一緒に来ますか?」



そのにこやかな表情にウンウンと勢いよく頷いて立ち上がれば、オリは嬉しそうに一度笑ってわたしが追いつくのを待ってくれた。
オリの元へ行く途中に盗み見たエンは口を尖らせていて、本当に無邪気な子どものようだと思った。




スーツの背中を追ってたどり着いたそこには、テレビで見るようなシステムキッチンが広がっていた。
どこもかしこもピカピカに磨かれていて手入れが完璧。もしかしてオリが掃除をしていたりするのかな?それともエンが?――いや、エンの可能性はないかな。



そういえば今日まで考えたことがなかったけれど、ここは一体誰の家なのだろう?
かなり広いけれどエンやオリ以外にも人はいるのだろうか。





――――…この家は、なに?


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