彼女は学校に行












「悪いことって、いったい誰のための、何のためのものなのか、その行為に誰が何を持って悪いって価値を付けたのか、ときどき、全然、わからなくなる」







そう言って、橋倉は再び、ぼふ、と布団の上に後頭部を預けた。








「・・・たとえ、殺人が正当化されても、私みたいなひきこもりの弱者は殺す勇気もなく殺されていくんだと思う。だから、殺す世界よりも、死なない世界を選ぶ、もしかしたら、昔はみんな臆病者だったのかも」








小皿をテーブルの上に置く。橋倉が、「ははは」と笑った。






「臆病者は慈悲の象徴かもな」





後頭部を布団に乗せているせいで、橋倉の首は突っ張るように伸びていて、喉ぼとけが動くたびに鳴る笑い声は短い。







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