彼女は学校に行
「紅茶とシフォンケーキもらった腹減ったあとはいこれ、プリント」
閉めきられていた扉が開くと同時に、矢継ぎ早に続く声とすらりと背の高い人物が部屋の酸素と体積を減らす。
部屋の主である私は、慌ててベッドから起き上がり、短い悲鳴のあとに叫ぶ。
「貴様はノックという文化を知らないのか!」
人と会話をする機会がほぼ皆無な私の声は、曲がりくねった道のように、終始不安定に揺れる。
それに対して、二人分の紅茶とシフォンケーキが乗ったトレーを手にした、私と同じクラスの男子生徒、橋倉りょうは訝しげな表情を浮かべたまま言う。
「自分の部屋にノックする文化はないだろ?」
橋倉は口と共に歩みも進め、部屋の真ん中にある丸テーブルの上にトレーを置く。