彼女は学校に行
私はドン引きしながら口端を引き攣らせて呟く。
「いつ橋倉の部屋になった17年間私の部屋だよ」
「『お前のものは俺のもの。俺のものは俺のもの』って格言があるの、平田知らないのか」
「どこぞのジャイアンだよ橋倉ってジャイアンだったの」
「っていうか早く食べよ。俺は平田のお母さんの好意を今すぐ噛み締めたい」
「シフォンケーキ食べたいだけでしょ」
「そうともいう」
はあ、とベッドに再度倒れ込んだ私に対し、そんな彼女を一瞥した橋倉は「いただきまーす」なんてひとりでシフォンケーキを食べ始める。
ベッドに寝っ転がったまま、私は橋倉に視線を向ける。
ベッドを背もたれにもぐもぐと口を動かす橋倉の横顔に満たない、左耳と、左頬と、左の睫毛と、鼻の先を、ぼんやりと眺める。
なんでこいつが、私の部屋にいるんだろう。
ふとした瞬間、いつも思うことだ。
橋倉が初めて平田家にやってきたのは2か月前。
私が夏休み明けから学校に行かなくなってから1週間ほど経ってからのことだった。